田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

日本の医療の特徴②高度な技術、公費を投入

日本の医療の特徴を簡単に紹介する後編です。

 

前編はこちら 

 

大きな特徴4つ

  1. 公的保険
  2. フリーアクセス
  3. 安くて高度(保険が使えて安い、国が値段を決定。で、世界的にトップ技術)
  4. 公費を投入(税収を投入して、保険料だけで足りない分をカバー)

 

今回は後半2つ。

 

安くて高度な技術

国が値段を設定

公的保険があり、自己負担額が少ない話は前回しました。

 

さらに、保険適用の治療は、国が値段を決定しており

異様な高額ということはありません。

  

保険点数1点=10円です。

以下の本、サイトで値段が確認ができます。

 

 

平成30年診療報酬点数表 | しろぼんねっと

 

自由診療…保険適用外の治療となると、病院ごとに値段が違います。

そして全て自己負担です。

 

例えば、不妊治療や、美容整形は、保険適用外です。

(不妊治療は、助成金制度あり)

また、効果がないニセ医療も、ここに紛れ込んでいます。

 

 

人間の命にかかわる医療は

基本的に社会の助けが入るのが日本です。

 

高度な技術

日本の医療技術は高度です。

 

たとえば産婦人科小児科分野。

周産期死亡率という言葉があります。

年間1000出産あたりの

妊娠22週以降の死産と、生後1週間以内に亡くなる赤ちゃんの数です。

 

つまり、生まれる前後に亡くなる赤ちゃんの率です。

 

これが日本は断トツに少ないです。

2016年 3.6でした。100回に1人以下、1000回に3.6人。

 

どの先進国と比べても半分以下です。

(以下、外国と比べるために、妊娠28週以降+新生児死亡

 

2012年の数値です。

アメリカ 6.8

ドイツ 5.5

 

日本 2.6

 

かなーり少ないです。

 

他、妊産婦死亡率という言葉もあります。

10万人あたりの妊婦さんの死亡率です。

これも日本は低い。

 

以下、2012年の数値です。

アメリカ 18.7

カナダ 7.6

 

日本 3.5

 

妊産婦死亡は、デンマーク(3)、イタリア(3.3)、オランダ(2.2)、スウェーデン(2.6)等にやや劣ります。

しかし、それらの国は「赤ちゃんの死亡率」は日本ほど低くありません。

日本はバランスがとれています。

 

あくまで、お産は母子ともに命がけです。

それを忘れさせるぐらい安全にしたのは、日本の医療の努力の賜です。

本当に、日本の周産期医療はトップレベルなのです。

 

他領域の医療技術も、トップレベルです。

平均寿命が長いのは、栄養面など他の理由もありますが

医療技術が劣っていたら達成するのは不可能です。 

 

ちなみに 

平均寿命は、亡くなる人の平均年齢ではないです。

0歳児の平均人生時間

各年代での死亡率をくぐり抜けた結果の数値です。

これが長いのは全年代で死ににくいことを意味します。

 

公費を投入

国全体としての医療費は増大しています。

 

保険料だけでは賄えていません。

既に、税収……公費が投入されています。

「保険料以外」を投入している現状は、

「保険制度」としては既に破綻しているとも言えるかもしれません。

 

医療費増大の原因は2つ

  1. 高齢化社会
  2. 高額な最先端技術 

 

高齢化社会が、医療費増大につながるのは想像しやすいかと思います。

主に2について述べます。

 

高額な最新技術も保険適用

外科でも

オーソドックスな、開腹手術と

新しい技術の、腹腔鏡手術があります。

 

例えば、75歳以上後期高齢者(1割負担)が

大腸癌(結腸癌)の手術を受けたとします。

 

開腹手術 35680点→356,800円

 自己負担 35,680円

    公費    321,120円

 

腹腔鏡手術 59510点→595,100円
 自己負担 59,510円
 公費   535,590円
 
 
これだけ見ても、新しい治療の腹腔鏡の方が21万ぐらい公費の支出が多いです。
(自己負担3-6万を高いと感じる方がいるかもしれませんが……車の修理代、固定費合計より安くないですか?癌の手術ですよ。命ですよ)
 
保険適用で、きちんと最新の医療を提供しているからこそ
医療費は増大しているのです。
 
 
 
日本が他国に比べてやりすぎている延命治療も公費を圧迫する一因です。
この点は、費用面だけが問題ではなく
私は、その延命行為は苦しいだけではないのか、という思いがあります。
 延命治療を控えるのが即、平均寿命の大幅な短縮につながるわけではないです…。平均寿命の定義は上に書いた通りなので。
 

クオリティ・アクセス・コスト

医療は

  1. 質 quality
  2. アクセスの公平性 equity
  3. 費用 cost

のバランスをとることが大事です。

 

日本はWHO(世界保健機関)から、高評価を受けています。

医療を受ける側にとっては恵まれていると言えます。

 

しかし、国にとっては支出が増える一方です。

医師の多くは、今の制度はもたないと感じています。

 

いきなり破綻し

裕福な人専用の医療となるのは、避けたいところです。

 

各年代の負担や

延命治療などについて、考え治す時期にきているのかもしれません。

 

個人的におススメの、他サイトのリンクを貼っておきます。

高齢者の死に方について世界との違いを考える|みんなの介護ニュース

「税金で高齢者を支えている」と思ったら大間違い。実は勤労世代も5人に2人は逆に社会に支えられている