田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

決め台詞が無茶苦茶ださい ファンタジーすぎるDr.X④

シリーズ記事になります。

ドラマDr.Xツッコミを軸に、医療について書いていきます。

 

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて

 

 つっこみどころ

  1. 日本じゃない
  2. 病気の概念がおかしい(特に癌)
  3. 手術シーンが適当すぎる(手術室前の段階でアウト)
  4. 決め台詞が無茶苦茶ださい失敗しないので」の方じゃない)
  5. ”フリーランス軍団”、遊びすぎ。
  6. 医局軍団も暇すぎ。無能すぎ。
  7. 悪の権力組織ww( ^ω^)・・・
  8. 手術一つで大騒ぎしすぎ
  9. 病院一つの人事で一喜一憂しすぎ
  10. 医局に属してない医師は今現在結構いる。フリーランス????

 

え、もしかしてそれ決め台詞!?

 

「失敗しないので」の方じゃありません。

 

「余計なものを傷つけずに、悪い所を取れて、その後も手術後のトラブルなく退院できる」って意味なんでしょう。これは、決め台詞としては成立していると思います。

まあ、「失敗」がなかろうと、

大門さんがやってるのは、ただ自分の器用さをひけらかしているだけなので

手術ではなく、「傷害」ですけど。

これは②癌という病  に詳しく書いてます。

 

 

何が衝撃的にダサいかって言うと、

麻酔科の城之内先生(キャスト内田有紀)の台詞です。

 

とーこ「え?今の?今の決め台詞なの??え?今の格好いいの?」

夫  「この世界では格好いいんだよ。受け入れてあげなよ」

とーこ「言わないよー。ださいよー。つらいよー(悶」

 

夫は

Dr.Xを「おかしい所しかなくて、クセになる」と、私のいない所で結構見ていたようです。

「大門辞めさせたい一派を応援したくなっちゃうんだよねー」とニヤニヤしてました。

 

 

 

で、結局どの台詞かっていうと、これです。

「血圧XXのXX、脈拍XXでサイナス」(どや顔)

 

言わないよぉおおおお

 

でも、フリーランス麻酔科医城之内さん、手術前や、手術終了後に言ってましたね。

 

とても大事なバイタルサイン

vital signs バイタルサイン 生きている兆候って意味です。

これらを測って、患者さんの状態を把握し、治療の指標の一つとします。

代表的なのは、血圧、脈拍数、呼吸数、体温です。

(医学生は、他のもちゃんと把握してくださいね)

 

この数値によって、命の危険が迫っているか、判断できることがあります。

 

「高血圧が怖い、血圧が怖い」って言ってるCMありますが

血圧が0ってお亡くなりになってますからね?

私たち、上の血圧50とか聞いたら焦りますからね?

(血圧は「上の血圧=収縮期血圧」「下の血圧=拡張期血圧」があります)

高血圧が長年続く(=水道管の水圧が高すぎて水道管が悪くなる・壊れる)と、確かに病気は色々起こりますけど、血圧0よりは生きてる証拠です。

 

じゃあ、城之内がわざわざ言ってるの、別にいいじゃん、と思うかもしれません。

 

いや、おかしいです。

手術前後にバイタルサインを言う麻酔科医はまずいません。

 

必要のない情報

言ってるシーンをよく思い出してください。

手術まだやってませんよね?

もしくは、手術、終わってますよね?

 

 

手術に限って言えば、

外科医は手術から目が離せないので、数値を教えてもらうことも、あります。

バイタルサインが異常を示している時に。

 

 

手術の前後なら、外科医だってどこを見たって自由です。

自分でバイタルサインのモニター見ればいいんです。

 

見ればわかること、わざわざ言うの?

しかもめっちゃ正常なのに……。

 

 

そして、さらに違和感を増すのがサイナス。

 

sinus サイナス

これ、洞調律って意味です。

洞調律=心臓が正しいリズムで打っています。

って意味です。

 

正常なんです。いたって正常なんです。

つまり、わざわざ言いません。

 

 

「血圧正常、脈拍正常、心臓のリズム正常です(どや顔)」

モニター見ればわかりますよ。はい。

手術終わってますからね。はい。

正常なリズムですね。ええ。モニター音聞けばわかりますよ。

 

( ^ω^)・・・うん

「安倍晋三は、日本人です。男です。生きてます」的な。知っとるがな(2018年4月現在)

 

必要のない情報を、わざわざ言っているんですよ。

毎回、実際の手術現場でやらないことを放送されると、かなり違和感あります。

 

純粋に、格好悪すぎました。

あれを決め台詞にするのは無理があったんじゃないでしょうか。

なじみの薄い単語をそれっぽく並べると格好いいのではないか、という安直さが酷い。

 

必要なことを言うのが医療現場

確かに、出血しても、色んな手術操作を加えても、バイタルサインを保つのが麻酔科医の仕事の一つです。(すごいですよ本当)

なので、手術の進み具合とか、バイタルについて外科医と術中に会話することはあります。

でも手術後にわざわざ言わんです。聞いたことないです。

せいぜい「安定してます」ぐらいか。

 

実際に言うとしたら、手術中に

「血圧下がってます」

「不整脈出てます」

とかでしょうか。

 

逆に外科医から

「これからXX操作するので血圧変動するかもしれません」

「出血してます」

「今、止めました」

とお伝えすることもあります。

 

正常なときは問題がないので、互いに特にコメントなし。

何か起こった時、起こりそうな時こそ、会話をします。

 

必要なことを、簡潔に。これ基本です。

 

前回の

学生レベル以下の手術シーン ファンタジーすぎるDr.X③ 

でも、手術の無駄が多くて格好悪いと書いた気がします。

一貫してそういうドラマなのかもしれません。

 

 

余談ですが

手術中に限らず、命に関わるようなバイタルサインを見つけたら

どんな状況でも、医療者は

誰かに、協力を求めようとその状況を発信します。

 

一人では助けられないからです。

あの世にわたりそうになった人を、こちら側に引き戻すには、人手が必要なんです。

という時点で孤高の外科医という概念は、終了してしまうんですけども。

まあ、まあ、キャラクターとして格好いいですもんね。

 

  

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて