田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

日本の医療の特徴①公的保険とフリーアクセス

日本の医療の特徴を簡単にご紹介。

 

病院は待ち時間は長いし、診察時間は短いし、医師は何言ってるかわかんないし……

と、不満を持つ方も多くいらっしゃると思います。

 

ところが

 

日本の医療制度は、世界的にはかなり良い方です。

WHOから高評価で、患者にとって良い制度とされているんです。

大雑把に4つの特徴から説明します。

 

大きな特徴4つ

 

  1. 公的保険 (国民皆保険!)
  2. フリーアクセス(病院を選べるのって珍しい)
  3. 安くて高度(保険が使えて安い、国が値段を決定。で、世界的にトップ技術)
  4. 公費を投入 (税収を投入して、保険料だけで足りない分をカバー)

 

公的保険

日本は国民皆保険です。

全員が、なんらかの公的な医療保険に入っていることになっています。

 

普段、病院窓口で払う代金だけが、医療費ではありません。

明細書を見ると、医療費と、自己負担分の額が全然違うはずです。

保険証を忘れた時、とんでもない額を払わなければならず、驚いたことはないでしょうか。

 

大抵の人は3割負担、今は後期高齢者(75歳以上)だと1割負担です。

これ凄いことなんですよ。基本70%オフ!

75歳以上になれば90%オフなんです。

そんな商品って、他に世の中にありますかね?

 

裕福な人だけが、医療を受けられる状況を避けるために

皆で社会保険料=医療費を納めて、互いに負担しよう、という制度です。

 

これがなかったアメリカの破産原因の第一位は、医療費です。

2億の資産がある夫婦でも、癌になると破産していました。

全然足りないのです。

 

以下、アメリカの医療費です。

(というかアメリカは、医療機関によって値段が違うという問題も…)

 

頭部CT 1回5~10万円

 救急外来で「心配だからCTとってくれ」という患者さんがいますが、この値段だったらそう言えますかね…?

 

肺炎 30日間入院すると数千万円

 誤嚥性肺炎で繰り返し入院して徐々に弱っていく高齢者の方がいますが、それができるのも、日本ならでは。

 

アメリカはこんなとんでもない値段な上、「公的保険なし」なのです。

自分で入る民間保険しかないのです。

まさに裕福な人のみが、医療を受けられる制度でした。

(なんとか始まったオバマケアも、なかなか難しい状況のようです…)

 

諸外国について詳しく見たい方はこちらへどうぞ

価格.com - 海外の医療費 | 海外旅行保険の必要性

 

ちなみに

日本には公的な国民皆保険に加えて

高額医療制度というものがあります。

一定額を超えたときに、助けてくれる制度です。

詳しくはこちら→ 高額な医療費を支払ったとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

 

 

フリーアクセス

病院にかかるとき、どこを受診しようって調べますよね?

これも珍しい。

 

ゲートキーパー医(家庭医)という制度がある国が結構あります。

イギリス、ドイツ、フランス、アメリカなどです。

 

こういう国は、具合が悪くなった時

まず指定されたゲートキーパー医を受診して、そこから専門の病院に紹介されます。

直接、大きな病院や専門医にかかることは許されていません。

(緊急時を除く)

 

しかも、ゲートキーパー医も予約数日後にやっと受診ができることも多いそう。

そこから専門医に紹介となると、数週間。運が悪いと数ヶ月単位とか。

 

つまり、病院にたどり着くまでがめちゃめちゃ遠いのです。

というか、日本が病院までの距離が近い。

 

日本のフリーアクセスは、単純にはいい制度だと思います。

 

しかし、大きい病院に不必要に受診する人が増える原因にもなっています。

 

当たり前ですが、医療者以外は、やはり医学の深い知識があるわけではありません。

軽症を重症ととったり、大きい病院にかかって検査をしたがったり…ということがあります。

フリーアクセスに任せていると、効率が悪いのはしょうがない面があります。

(その知識を身に付けるための医学部6年間ごりごり勉強ライフ、その後も続く勉強につぐ勉強なわけで)

 

結果、医療資源(人、検査、薬)などを無駄遣いすることになり

医療現場の疲弊や医療費(保険料や税収)の無駄遣いの一因になっています。

 

日本では、国民皆保険のおかげで

「安心のために」「念のため」に受診する方が諸外国に比べ多いですしね。

……諸外国の病院へのハードルが高すぎるとも言えますけども。

 

 

日本は「病院に来てから数時間待つ」というのが当たり前になってはいますが、

受診までハードルが低いのがその一因といえるかもしれません。

(勿論、これだけが原因ではないです)

 

 

大学病院などは「基本、紹介状持参で」という形ですが

ゲートキーパー制度に比べれば、受診は制限されていません。

 

 

続きます。