田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

何歳の医師にかかりたいか~研修医とおじいちゃん先生とどっちがいい?

ベテランのおじいちゃん先生……

 

医学部高学年ごろに、気づくことがあります。 

「おじいちゃん先生ってヤバい……!」

 

このヤバいは、悪い意味です。

 

何がヤバいかって

最新の医学知識をもってない確率

高齢になると、ガンガン上がるのです。

 

長年の経験が……とか言ってられないぐらい、医学常識って変わるんです。

 

長年の経験より、最新の医学知識!

高齢の医師に診てもらいたい人って結構います。

実際「あんな若い先生で大丈夫か!」的なこと、よく言われましたし。

 

しかし、医学の常識ってあっという間に変わります

この観点からいうと、年をとった「だけ」の医師は正直おすすめできません。

 

身近な話でいうと、脱水の概念なんか、特にそうですよね。

運動中の水分は、体が鈍るから飲まないのが昭和の常識でした。

今では、脱水で死ぬリスクがあるのがわかってます。

とんでもない話です。

 

あと、

「傷」に対する扱いも、そうです。

みなさん、怪我したとき、外で転んだとき、どうしてますか?

「消毒する」って思ってませんか?

しかも「治るまで毎日消毒する」って思ってませんか?

 

消毒、いりません。

 

今は傷は消毒じゃなくて洗浄が基本

消毒、まじでいりません。

それよりも、水道水でガンガン洗ってください。

あ、日本の水道水に限ります。

(日本の厳しい審査基準をくぐりぬけた大腸菌が含まれていない水道水に限る)

 

消毒だけだと、傷についてる汚れは取りきれません。

そのうえ、消毒薬は細菌を殺すかもしれませんが、人間の細胞も攻撃します。

つまり、傷の治りを遅くします。

傷に対するマネジメントは、消毒ではなく、洗浄、です。

バイキンが気になるー、というなら毎日消毒じゃなくて、毎日洗浄です。

 

消毒は、どうしても殺菌が必要と判断したときだけです。

大抵はガンガン洗うことで、十分に菌がなくなるとわかっています。

 

そんなわけで

怪我をした人に、まずやることは

めーっちゃ洗うことです。

家でも是非、そうしてください。

 

外で骨折などの派手な怪我をした人の手術のときって

ブラシ、洗剤、大量の清潔な水、を使ってめちゃくちゃ洗います。

整形外科の先生、まじで洗いまくってます。

 

これがね……

高齢、開業医の外科の先生の手伝いに行ったらね…

創部を毎日、消毒してました……。

 

てか、

傷をパッキングして

身体本来の治癒力で、皮膚が盛り上がるのを待つべきタイミングもあるんです。

そこを全力で無視して、毎日、傷をみて消毒してました。

 

高齢の医者が、患者の傷の治りを遅くしてました。

 

崩れ落ちそうになりました。

 

30〜40代の医師がおすすめ

「最新の医学知識」と「技術」を、

同時にもっている人が多い年代ってのは、やっぱりあります。

必ず「アタリ」というより、「ハズレ」が少ない感です。

 

個人的には、30〜40代の医師がそうだと思います。

50代は、人によっては凄く頼りになる。けど、微妙に古くなってきてる人もいる。

60代も、同じく。古くなってる人の割合が、増える。

70代以上はロシアンルーレット……。

 

あんまり高齢になると

経験と最新知識が組み合わさったすごい先生

経験と自信ばっかりで、最新知識がなさすぎるやばい先生か

どっちかです。

 

で、後者の方が多いかなあ……。

前者に会えると、本当に、嬉しくなって全力で尊敬します。

 

ああ、稀に、後輩に質問できる素敵柔軟性な先生もいらっしゃいます。

 

ちなみに

医局や、大きい病院にいると、「最新知識が無さすぎる」リスクは下がります。

絶えず新しい刺激がありますからね。

 

もちろん、個人経営の開業医で、かなり頼りになる凄い先生もいらっしゃいます。

あの人種は、なんか特別なんだろうな……。

ポンコツさんに会うのも開業医だけどさ…。

 

 20代医師も結構おすすめ

若い医師もいいですよ。

20代医師は、本当に元気です。フットワークが軽い。医療にスレてない。

学ぶ意欲があって、医学部時代の知識=ほぼ今の最新知識。

 

そして、まともな病院なら、必ずバックアップに、上の医師がついています。

上の医師に、報告・連絡・相談することが刷り込まれていて、

結果、かなり医療の質は保証されます。

 

 

傾向の話です……

高齢の医師、全員の知識が古いわけじゃないです。

日野原先生は、亡くなる少し前の診療録も素晴らしかったし…。

 

外科の場合は、長年の経験による「手練れの医師」は確かに存在します

(老眼+手が震えてる場合もあるけど…)

それでも、手術後の術後管理(点滴、傷の管理、食事の管理)などは、

どんどん新しい方法が出ますので、やはり新しい知識を仕入れ続ける必要があります。

 

 

どうか、ご参考までに。

 

蛇足呟き。

ああ、ハズレくじになる前に、年とともに後輩を見守る係になってきっちり定年したい…。定年までは後輩に新しいことを教えてもらいたい。