合併症とは何か~合わせて併せて嫌なもの
「合併症」という勘違いされやすい言葉
なんてわかりにくい言葉でしょう。
合わせる:一致、合計。
併せる:一緒。二つのものをあわせる。
症:症状。
うん。わからん。
かなり誤解されています
「医療ミスじゃないの?」→違います
「必ず起こるんでしょ?」→違います
「たまたま起こるんでしょ?」→そういうものと、そうじゃないものがあります。
「なんか怖い」→うーん、そうですね……。
たしかに、合併症は嫌なものです。
でも、やたら怖がってもいいことはないです。
何割か起こる、とわかって対策や対応を準備しておく類のものです。
ちなみに英語ではcomplicationsっていいます。
合併症とは
めっちゃ簡単に言うと
病気・治療をしている最中、もしくは、後に起こる
嫌なことです。
図で書くとこんな感じ。
因果関係は必ずしもありません。
メインAと一緒、もしくはちょっとあとに起こる嫌なことB。
それが合併症です。
合併症は2種類あると思うとわかりやすい
病気のせいで起こる嫌なこと
メインの病気Aのせいで、起こる病気B:合併症
図だとこんな感じ。
具体例を1つ。
糖尿病の合併症に、糖尿病網膜症というのがあります。
これは
メインの病気A(糖尿病)のせいで
合併症B(糖尿病網膜症)になります。
糖尿病って、血管の中を糖分の多すぎる血液が流れるんですよ。
水道管を塩水が流れてるイメージです。水道管が傷みそうでしょう?
そんな感じで、血管が傷みます。
結果、色んな悪いこと=合併症が起こります。
目の血管がダメになって、視力が低下するのが、糖尿病網膜症。
最終段階だと失明。
糖尿病→糖分含んだ血液→血管が悪くなる→目が見えなくなる=糖尿病網膜症
という感じで、わりと因果関係があります。
このタイプの合併症は、
メインの病気に対する治療を頑張って、どうにか防ぎたいものです。
糖尿病の人の8割は、どんなに言っても食べまくるけど……(芸能人にもいますね)
失明とか、片足失うとか、かなり恐ろしいことが待っているのに。
処置や治療のあとに起こる嫌なこと
処置・治療Aの最中や、その後に起こる嫌なこと(病気・症状)B:合併症
図だとこんな感じ。因果関係は必ずしもありません。
ここでまた、具体例を1つ。
胃や腸の手術の合併症に、腸閉塞があります。
(いろいろ種類がありますが、今回は麻痺性腸閉塞に限定)
麻痺性腸閉塞は
お腹を切って開ける手術をした人に、起こることがあります。
腸が直接触られたり、空気にさらされたりすると
腸がびっくりして、手術後に腸の動きが悪くなることがあるんです。
麻痺しちゃうんですね。
すると、腸の中で、食べ物や便が大渋滞を起こして、お腹が痛くなって吐きます。
軽症は、ご飯食べるの数日休む。
重めだと、鼻から管をいれるて、詰まってるのを吸引し続ける。
麻痺性腸閉塞のレベルをこえて、物理的に細くなってると手術…。
これは、同じ手術をしても、起こる人と、起こらない人がいます。
原因は、はっきりしないのです。
手術中のミスのせいでは?と思うかもしれませんが、
少なくとも麻痺性腸閉塞は、それはないです。
高齢者、体質、その他持病など、条件が悪い人は起こりやすいですね…。
病気はロイヤルストレートフラッシュの概念であります。
こういう類の合併症を
医療ミスと混同する人がいて、つらいものがあります。
医療ミスと、合併症は違います。
- メインの病気のせいで起こる病気B
- 治療A後の、嫌なことB
このBが合併症です。
ミスじゃない
できれば起きてほしくない
でも、時々起こる
治療に伴う嫌なこと。
それが、このタイプの合併症です。
治療はいつも利益と不利益のシーソーゲーム
どんな治療にも「いいこと」と「嫌なこと」が同時にあります。
同時にあるから、「嫌なこと」を合併症というわけで…
本人にとって「いいこと」の方が大きい!となったら治療に踏み切ります。
たとえ「嫌なこと」のリスクがゼロではなくても、です。
医療とはそういう、ものです。
大雑把なイメージなので、現場で確認を!
合併症、と一言で表現しても
実際に起こる事態は本当に多彩です。
治療をすると
「合併症という不利益が起こることがある」と医療者は知っていて
対応を準備しています。
前もって、説明もしています。
そのときに、どうか聞き流さず、
- 何のためにやるのか
- 治療のいいことは何か
- どんな嫌なことが起こるのか
- 自分に起こる確率はどれくらいか
- どんな対応を準備しているのか
など、確認するように、してください。
わからないからと無視をせず
ビビりすぎず
医療に向き合ってくれる人が増えたらなあ、と願います。