田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

老衰・認知症でのラスト〜最後はどうやって死のうかな③

シリーズ記事になります。

最後はどうやって死のうかな

①日本人の死因

②スタンダードな死に方・病死

  

最後はどうやって死のうかな

①日本人の死因  人は必ず最期がきます

②スタンダードな死に方・病死 病死では、どういう風に体が弱っていくか

③老衰・認知症でのラスト 老衰=安らかにきれいな死ではない

④食べることは生きること。点滴での栄養

 

今回は老衰、認知症です。

 

不慮の事故、天災、自殺、子供の病気などは、今回は除きます。

別格すぎて、私には、まだ表現する手段がありません。

自殺は、本人の自由ではありません。それ以外を選べない程、追い詰められた状態の結果です。 

 

日本人の死に方ざっくり4つ

 

  1. 内臓の病気(心臓・肺・腎などの機能が落ちていく)
  2. 血管病変(大事な血管がつまる・破れる等)
  3. 老衰・認知症

 

 

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この図、縦軸は、体の機能になります。

身の回りのことができる元気さ、活動性とも言い換えてもいいです。

低い状態は、誰かの手助け=介護が必要になります。

 

グラフの線が、一番下まで落ちた時、それが死ぬときです。

 

最後、老衰の項目です。

 

老衰の実態

やっぱり病気は嫌だ。

老衰がいいってなるかもしれません。

日本人の死因上位に、5位に老衰がありますね。この中に自分も入りたい、と。

 

しかし、これといった病気がないので、

本当に徐々に、徐々に体の機能が下がります

つまり、介護される期間がとても長くなります

食事も自分でとれず、下の世話も人に頼るしかない。そういう期間が、かなり長いです。

 

グラフで示すとこんな感じです。

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確かに長生きかもしれませんが……かなり低空飛行の時間が長いです。

 

 

しかも、身体の機能だけは、めっちゃ元気で、

脳の機能だけ下がる人がかなりいます。

認知症です。

死因5位の老衰には、かなり認知症の人が含まれます。

 

体は元気ですが、脳の機能は下がっています。

若かりし頃の輝きなど消え、理解しがたい行動原理で動き、排泄物を垂れ流すようになります。

 

人間である限り、一度介護現場を見て、老いの現実を見た方がいいです。

 

もしくは、ヘルパー、介護士、看護師、医師の言葉を聞いていただけるだけでもいいです。

 

 

 

「自分は大丈夫」

って思いましたか?

 

 

全員が死ぬ、これに例外がないように、

老化も生きている限り例外などありません。

 

介護する可能性、介護される可能性、少し考えてみてください。

 

 

 鼻からチューブでの食事投与、その果ての死

あと、ご飯が食べられなくなっても

他の病気がないばっかりに

鼻から胃へ栄養を投与するチューブをいれたり

直接、胃へと食べ物をいれる胃瘻を作ったり

ということも、この「老衰」の人たちの中で起こりがちです。

 

ご飯がうまく飲み込めないことは

「病気」ではなく「老い」であるため、対処したくなるのが日本人らしいです。

死なせてくれないのです。

 

 

90代後半で、鼻からチューブをいれ、

そこからの栄養で、数年以上生きている方にお会いすることがあります。

一人や二人ではありません。

その末に亡くなっても老衰ということになります。

しかし、ご飯がうまく食べられなくなった時点で、覚悟を決めてもよかったのではないでしょうか。

 

鼻からチューブがどれほどの違和感か……

でも、家族がやってくれと言ったら、やらざるを得ないのが日本です。

 

アメリカやヨーロッパで寝たきり老人が少ないのは、

食べられない人、動けなくなった人に、こういうことをしないからです。

そのまま亡くなっているんです。

 

 

私個人は

「ご飯がうまく飲み込めなくなったら、何もしないでくれ」

と、家族に伝えています。

 

 

死因3位の肺炎 

日本人の死因、肺炎3位です。

これ、老衰の一種がかなり含まれています。

 

 

肺炎と一言でいっても、種類は実にさまざまです。

ウイルスや細菌による肺炎は、誰でもなりますが

高齢者に多いのは、誤嚥性肺炎です。

食べ物を間違えて、肺の方に飲み込んで、それで肺炎になります。 

 

CMで見る肺炎球菌ワクチンは、

菌での肺炎を予防するので、こっちは予防できないです。

誤嚥性肺炎は、菌じゃなくて、食べ物飲み物のせいですから。

 

誰でも経験が一度はありますね。

変な風に飲み込みかけて、苦しくってゴホゴホ咳き込んだ経験。

あれ、肺の方に入りかけたのを、跳ね返そうと頑張ってるんです。

 

それがうまくできなくなるのが、老化です。

誤嚥性肺炎は

死因は、病名:肺炎で死亡、ですが

人間としては老衰に近いです。

 

この肺炎を繰り返してしまう人は、体がかなり弱ってます。

つまり、治る力が十分にありません。

そういう人に肺炎治療の重症用フルコースをやると、辛いことになります。

眠らせる薬をいれて、口から人工呼吸器いれると、生きながらえます。

しかし治る力が十分にないので、人工呼吸器に一生つながれたままになります。

 

亡くなるまで、です。

 

自分が誤嚥性肺炎になったときは

どんな重症でも人工呼吸器はやめてほしい、と考えています。

 

老衰は、家で安らかに眠って亡くなるイメージだったでしょうか。

そんな方はほとんどいません。

 

 

 自分だったらどうしよう

どうか、この記事に目をとめたついでに考えてください。

 

自分は一定年齢越えたら

攻めの治療は全部なしで

苦しさを和らげる治療だけにしてもらうつもりです。

 

まあ、家系的には、60〜70代で癌になるかな、と予想しています。

病なく生き続けるのなら、老衰、認知症パターンのマネープランも用意しないといけないですね……。

もちろん、不慮の事故や、出産時のトラブルで死ぬこともあるんですけどね。

 

 

 

明日死ぬかのように生きよ

永遠に生きるかのように学べ

偉大な故人ガンジーの名言です。

 

本当にそうですよね。

明日とか一週間だと刹那的になりすぎるので

「数年後に死ぬかのように生きろ」が、個人的にはちょうどいいです。

癌のステージ2〜3かな。

 

どう死ぬか考えることは、どう生きるかにつながります。

自分や、家族だったらどうしたいか。

考えるきっかけになれば幸いです。

 

老化、死を前にしたとき

現実が受け入れられず、悲嘆にくれるだけの人が少しでも減りますように。

尊厳を保って生きられる人が増えますように。

 

 

最後はどうやって死のうかな

①日本人の死因  人は必ず最期がきます

②スタンダードな死に方・病死 病死では、どういう風に体が弱っていくか

③老衰・認知症でのラスト 老衰=安らかにきれいな死ではない

④食べることは生きること。点滴での栄養