田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

田舎医療徒然②医師の配置

田舎の特徴って、選択肢の少なさに集約されるのでしょう。

 

 

「何もない」と言う人もいますが、何もないわけじゃないです。

選択肢が少ないだけです。

 

たまに東京に行くと、選択肢がいちいち多くて、自分は面倒くさくなってしまう田舎人であります…。少し話題になると行列ですし。

 

美術館、博物館、演劇、コンサートは、そりゃ都会がいいですね。

劇団四季は全国公演してくれますけども。

アニメ、ドラマや本は、インターネットのお陰で割と田舎でも快適です。

 

病院も選択肢が少ない

大きい病院は少なくてOK

 

大きい病院(様々な手間のかかる重症の治療、緊急対応ができる病院)は

今後は、少なくなってくる……はずです。

都会でも。

集約化、という言葉を聞いたことがないでしょうか。

 

中途半端な規模の病院があちこちにあるより、

「ここ1つでしっかり完璧に対応できます!なんでも!」という病院がドーン!とあった方が有用です。

スタッフも疲弊してないし、色んな医師の目に晒されるというのは、質の高い医療を受けられる可能性が高いです。

 

広く浅く医師がいると

「ここではスタッフの数も少ないし、施設の設備も貧弱なので対応できないです」

という病院が大量発生することになります。

それだと、重症の患者さんは二度手間ですし、命に関わります。

 

大抵の人は「軽症」なんで

便利に気軽に受診したい!と思って

あちこちに病院があればいいのに…と思うかもしれませんけども。

 

都会だろうが、田舎だろうが

それぞれの病院の役目が明確になっていて、互いに連携がとれていれば、良いのです。

 

 システムが整ってなくて、スムーズにアクセスできない、となれば問題となりますけどね。

 

小さい病院がないと、問題

何か症状があって困ったとき、

薬を飲み続けなければいけないときは、

近くに病院がないとかなり不便ですね。

 

小さい病院でいいんです。

そこにいる医師が、確実に重症を拾って、次の大きい病院に繋げばいいのですから。

……それが、また簡単ではないのですが…

 

話題になってた田舎の診療所

やはり普段、通院する病院が「ない」「遠い」ことは問題となってきます

 

Twitterで一時期話題になっていた診療所があります。

年収2200万円を提示したが、誰も医師が応募しなかった「青森県深浦町の診療所」です。

 

その周りに、全然病院がないのか?と気になって調べてみた所、

隣町の町立病院まで車で16分でした(でも、深浦町の南端からだとアクセスが厳しい??)

その町立病院ホームページによると常勤医は7名。

少ないけど、医師がいるといえば、います……ね。

 

色んな疾患の慢性期(症状が割と落ち着いて薬だけ飲み続ける時期等)は、そこに通えば対応できる気がします。

緊急の時は、救急車をぶっ飛ばして、大きい病院に搬送されることになりますし……

 

もしかしたら深浦町は、県からは、

「配置の必要なし(そこまでの余裕もないし)」と

判断されているのかもしれないですね。

 

それでも、住民のために

普段通える診療所の確保を!と頑張った形だったのでしょう。

 

 

深浦町の診療所は、無事常勤医2名確保して、2018年6月1日から開院されるようです。

深浦町の新診療所 6月1日開業/Web東奥・ニュース

 

 

攻撃対象にされてしまう医師

僻地・過疎地域の医師は、攻撃対象になることがよくあります。

村民、町民全員じゃないんです。

 

一部の方々が

「気に食わない」

と攻撃してくるのです。

 

気に食わない態度だった医師への

家、家族への嫌がらせ、子供へのいじめ、など実際にあるようです。

 

 

診療所勤務の医師から聞いたお話。

「最初はね、信用されなくて大変だった」

「夜中でもたたき起こされてね。わりと軽症で、本人も『早く診ろ!』と怒るぐらい元気なんだけども。最初半年かなー、参ったね」

「1年経つ頃には馴染んで、逆に、『夜に先生を起こしたら悪いと思って我慢した』っていう重症の方がいたりしてね…。そこの塩梅は難しいよね」

「食べ物貰うことは多いよ。美味しいんだけど、余ることも多いかな(笑)」

「あと、どこに行っても町内だと知り合いか患者さんに会っちゃうよね」

「山とか海とか、その場所の自然が好きじゃないと、ちょっと厳しいかなあ」

 

この医師は、近くの「地方都市」に家族が住んで、単身赴任という形で診療所勤務されていたようです。

割と平和に勤務されていたようでした。

 

理想としては

人口に見合った適切な医師配置、病院の集約化が必要。

 

医師は知識のアップデートなども必要だし、「ずーっと同じ過疎地域勤務」として募集されると、二の足を踏む人も多い。

なので

都道府県や国レベルで 医師を配置し、医師も数年で交代するシステムが理想かと。

 

まあ、それが難しいんですけども。

 

 

あと患者側には…

医療資源を大事に使う…という観点もあってもいいのではないかな、と

地方都市常勤&過疎地域の手伝いをしてる田舎医師は思うのでした。