田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

田舎医療徒然①選択肢が少ないことの長所

地名としては田舎。医師は意外といた。

田舎という点では間違いない

全力で田舎県として有名な(?)わが県です。

しかし、調べたところ、うちの地域は意外と医師がいました。

県内でも、隣の地域は、医師がかなり少なくて、確かに1~2時間かけて通ってきている患者さんがいらっしゃいます。

 

ええと、でもきっちり田舎ですよ。

年々人口は減少しています。

でも、過疎地域ではない、という程度の田舎です。

 

人口10万人に対する医師数は、県全体としては、勿論全国平均を下回ります。

下から数えた方が早いです。

しかし、うちの地域に限定すると、全国平均ぐらい医師がいました。

 

医療資源はまずまずある

「最先端医療」と呼ばれる類のことは、案外やっています。

一応、大学があるからでしょう。

腹腔鏡手術や、ダヴィンチを使ったロボット手術もやっていますし、

専門外なのであまり詳しくはないのですが、循環器内科や消化器内科でも最先端の治療は行っている様子。

 

注意:福岡市や札幌市のように「大都市」というレベルの場所ではないです。

 

田舎県で初期研修して、都会に出て行った同期は、

「意外と最先端医療は、同じくらいな印象。ただ、その他のちょっとした常識みたいなのが少し古いのが混じってることがあるかも…?栄養とか、抗菌薬とか、そういうの。

特に、県の中でも外れの方になるにつれて。あーでも、先生の個人資質かなぁ…」

とのことでした。

 

逆にそこら辺を気を付けて勉強しておけばいいのかな、とも思います。

自分では、外科なので「最新」に触れにくい分野の勉強会や、ウェブ配信を時々見ることにしています。

 

地方都市、その周辺の救急体制

自分の住んで居る地域は、重病人に対応できる病院があります。

しかし、周辺地域には重病人に対応できる病院がありません。

なので、救急車が周囲から1ー2時間かけてくることもあります。

天気が良ければドクターヘリも飛びます。県でヘリ保持しているのです。

 

自分が、

その重症の人を「受ける」側の大きい病院で働いている時もありますし

周辺地域に手伝いに出ていて重症の人を「送る」側の小さい病院にいる時もあります。

 

小さい病院にいるときは、

医師は自分1人、看護師1〜2人で勤務しています。

風邪ひいた、転んだ、ぐらいは全然構わないんですけども

「何か急いで処置が必要」なときは……大変。

 

明らかな重症、派手な交通外傷などは、

最初から「大きい病院」に救急車で送られてしまうので大丈夫なんですけども。

 

ふつうに歩いて受診してくる心筋梗塞、脳出血などの重症の方を確実にみつけて

その場で出来る最低限の対応をして、命のつなぐために、大きい病院に送る。

 

このとき、結構、精神力体力消耗しますね。

次の医師まで確実につながないと…!と。

 

 

ちなみに「心肺停止」という、

心臓も呼吸も止まっているような状態=あの世にわたりかけている人を

医師1人、看護師数人でこの世に引き止めるのは、かなり厳しいです。

 

医師個人の技能で、運良く「心臓の鼓動が再開」という程度まで戻せても、

その後も切れ目のない専門科による治療が必要なのことが殆どです。

 

「元気になった!」というレベルまで行くには、

重症な人に対応できる大きい病院にかかる必要が、出てきます。

 

 でも、きっと、ここらへんは都会の病院でも同じかな、と。

 

「重症に対応できる医師・医療設備」がある病院は限られています。

小さい病院に、重症の患者さんがきて、

今ここで出来る治療だけをして次につなぐ、っていう場面はどこでもあると思います。

 

おそらく、田舎と都会で違うのは「選択肢」の数です。

 

田舎だとせいぜい選択肢が1〜2カ所

田舎だと

「重症に対応できる病院」は搬送できる範囲で、せいぜい1〜2箇所。

 

なので

田舎県にある病院の方が

救急車の受け入れ率は高くなるようです。

 

小さい病院から、大きい病院へ患者さんを搬送するときも

すぐに受け入れ先が決まります。

他に選択肢がないからです。

 

受ける側も、自分たちの施設が受け入れないとどうしようもない、

とわかっているのです。

 

研修医時代、救急の有名な先生が講演にいらしたとき

「ここの県は、救急車の受け入れ率が高い。断らない。いいところなんですよ」

とおっしゃってくださったのが印象的でした。

 

 

医療施設が少なくて

大きいと施設と、小さい施設にはっきり分かれてる(集約化進んでいる)が故に

連携せざるを得ないのです。

 

田舎県の「まずまず医者がいる」ぐらいの地域は

意外と医療インフラとしては悪くない…かも。

 

なんとも、なんとも言い切れませんけども。

 

選択肢が少ないことの短所、過疎地域については、また別記事を書きます。