予防しやすい癌~ヘリコバクター・ピロリ菌による胃癌
わりと簡単に予防しやすい癌があります。
今回はそのご紹介です。
ヘリコバクター・ピロリ@胃
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)という菌がいます。
物を溶かす酸がたくさんある胃の中でも生存できてしまう強者です。
最初に発見した医師は
「胃なんて、生物にとってきついところに菌なんているわけないじゃんw」
と馬鹿にされたそうです。
先駆者とは辛いものですね。
それでも、見事に理屈で証明してみせたのだから
ウォーレン先生とマーシャル先生半端ないです。
これ、1979年のことなんです。意外と最近の話。
ピロリ菌のせいで胃癌になる
ヘリコバクター・ピロリがいると胃が荒れます。
胃炎、胃潰瘍で済めば、まだマシです。
厄介なことに
胃癌、MALTリンパ腫、特発性血小板減少症などの
命に関わる病気も引き起こします。
ピロリ菌が何十年も、胃の中に巣くって、
胃を荒らし続けた結果、胃癌になってしまうのです。
胃なんかで生息できるうえに、厄介なやつあります。
ピロリ菌を除菌して病気を防ぐ!
検査
ピロリ菌がいるかどうかは
血液、尿、便、呼気、胃カメラなど、いろいろな方法でチェックできます。
「消化器内科」と銘打っている病院なら、大抵できます。
その病院で出来なくても、できるところを紹介してくれるはずです。
大きい病院じゃなくて大丈夫です。
平日の、街中の「消化器内科」さんを受診してください。
胃とか腸とかいう言葉が入ってるとこです。
一度も検査したことがない&胃の症状がある方は、検査する価値があります。
治療=除菌しよう
みつかったら必ず除菌しましょう。
抗菌薬2種類+胃酸を抑える薬、合計3種類を2週間飲む
というのが基本の除菌治療になります。
人によっては、抗菌薬による副作用で、下痢が出てきます…。
でも、胃が荒れ続けたり、癌になるよりはマシですよね。
ちなみに除菌成功率は100%じゃありません。
1回目で除菌できなかった人は
他の抗菌薬に変更して再チャレンジすることになります。
東京だと1回目で除菌できる人は70%ぐらいになってるみたいです…(耐性菌が増えたらしい)
感染時期は基本は幼少期
「これから、新たにかかる可能性はないの?」と不安になる人もいるかと思います。
基本的には、ありません。
ピロリ菌には、幼少期に感染すると言われています。
免疫力がアップした成人になってからは、感染しにくいようです。
なので、大抵の人はピロリ菌は、1回チェックすれば大丈夫です。
ピロリ菌の感染経路は不明
たぶん、口から入ってるのですが……それがどこから来ているかわかりません。
60代以上に多いことから、
井戸水を使用していたことや、
上下水道が整っていなかったせいではないか、と言われてはいますが、不明です。
除菌で100%胃癌を防げるとは限らないけど…
病気は白黒つけにくいです。
なので「ピロリを除菌したら、絶対胃癌にならない!」というわけじゃありません。
何故って、他の原因でも胃癌になることがあるからです。
例えば加齢。例えば胃に刺激を与え続ける食習慣。
あと、ピロリ菌が長期間いた後では、除菌しても結局胃癌になるパターンもあります……DNAエピジェネティクス変化が関係あるらしいです。
ただ医療者としては、
ピロリ菌は
胃癌になる大きなリスクの一つなので
取り除きたいです。
防ぎやすい癌なんて、ごく稀です。
できるリスクマネジメントはやっておきたいところです。
病気はロイヤルストレートフラッシュの記事でいうところの
大きな原因になるカードを減らす、という概念です。
今(2010年以降)の日本人感染率は20~30%
かなりピロリ菌が認知され、検査・除菌が行われた結果の数値です。
以前は日本人60%という恐ろしい感染率でしたから、かなり改善しています。
今の日本人の感染率は20~30%
これでも、10人のうち2人なんで、結構高いと思います。
病院で働いていれば、ちょくちょく会います。
世代別にいうと
20~30代で10%の感染率、40代で25~30%ぐらいの感染率です。
10人いれば1人2人はいそうな気配です。
身近な例では
研修医同士で胃カメラの練習をやったら、めっちゃ胃が荒れてた→ピロリ検査したら発見!という人がいました。
誰しも一度ぐらい胃カメラ、ピロリ菌の検査は受けた方がいいかもしれません。
最後に
ピロリ菌検査は一石三鳥ぐらいのお得な検査です。
医学を勉強した身として全力でおススメします。
原因も、防ぐ方法もわかってる病気なんて、本当に少ないんです。
あ、勿論、
ある程度の年齢になったら、ピロリ関係なく
がん検診は毎年受けて欲しいです。
早期発見して、さらっと、癌をやっつけるために。