田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

外科医がダイエットしたくなる理由①開腹手術

医師は

「やべっ。痩せよ」

って思う機会が割と多いです。

 

糖尿病内科の先生は

糖尿病で、失明したり、足が細菌に負けて(壊疽して)切り落とす人を見ています。

 

循環器内科や心臓血管外科の先生は

体に悪い食生活を長年続けた挙句、心臓の血管がつまって心筋梗塞になる人や、大動脈が裂けて命を失う人に出会います。

 

食生活で、体を壊す人と、沢山出会うんですよね。

 

 

 外科医は手術の時に、痩せようと誓う

外科医はいつ痩せようと思うか。

やっぱり手術の時です。

 

あ、外科医の中でもお腹の外科医です。

消化器外科医と思ってください。

 

ふつうの人のお腹

これ、お腹の表面側の断面図です。

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身体を輪切りに切った図の、腹側の方。

皮膚、皮下脂肪

その下に筋肉、腹膜がある。

ここまでが「腹壁(ふくへき)」です。お腹の壁ですね。

 

で、手術はまずは「腹壁」を切る「開腹」から始まります。

 

皮膚を切って、脂肪を抜けて、腹膜を切ります。

するとお腹の中に到達!臓器さんこんにちは。

(筋肉は避けれるときは、傷付けないように避ける)

ここで「開腹」操作終了です。

 

さあ、ここからが本番だ!

と、さらっと進むのが、やせ〜普通体形の人。

言い換えると「腹壁」が普通の厚さの人。

 

 肥満の人のお腹

 

 これが肥満の方のお腹です。どーん。

 

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皮下脂肪、厚いです。

内臓脂肪、つきまくってます。

  

肥満の人の開腹

こういう「腹壁」の厚いお腹だと、

まず、「開腹」に時間がかかります。

  • 皮下脂肪が分厚い
  • アブラのせいで、手が滑る。
  • 小規模だけど血が出やすい(皮下脂肪の中に細い血管がある)

こんな感じの理由で。 

 

あと、お腹を切っただけでは、お腹の中が見える状態は保てないんです。

 

ほら、

クッションに切れ目入れただけだと中身見えないですよね?

こう、手をかけて、ぐーっと広げないと中身見えないですよね?

人間でも同じです。

道具を使って、「腹壁」をひっぱって、お腹の中をよく見えるようにしています。

 

これが、また、「腹壁」が分厚いと大変。

器具の固定だってし辛いし、助手がやる場合だって手の疲れが早いです……。

 

というか、いつものサイズの器具で対応できなくて、

「もっと大きいの出して!」とか時間のロスも発生。

一番の大きいの出しても、微妙……ということもある。

 

ヤセテヨー

 

 

肥満の人のお腹の中

で、やっと「開腹」が終わったとしても、その後も困難の連続。

 

お腹の中の作業(腹腔内操作)も、

内臓脂肪に作業を妨げられるからです。

 

腸や、大事な血管の周辺にも、脂肪がついてる。

→見えづらい。わかりづらい。

 

わかりづらいということは、

傷付けないように慎重に、時間をかけて作業する必要があります。

これはただの脂肪か、この中に大事な血管はないか、など。 

……脂肪で滑りやすいというのに。

 

肥満の人の手術

一事が万事やりづらい。

大変。

 

よって

時間がかかります。

痩せてる人より、危険が多いです。

 

時間がかかって、危険が多いってことは、

手術後の回復だって遅れる可能性があるってことです。

 

ヤセテヨーイイコトナイヨー

 

やっぱりBMI25ぐらいまでにおさめてくれると嬉しい…。

BMI30は辛い…。

 

 

 

長くなったので、2回に分けます。

 

ダイエットって、本当は決まった食事って意味です。

まあ、題名はね、便宜上です。便宜上。