田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

田舎医療徒然④診療所お手伝いの日々

過疎地域の診療所、小さな病院にお手伝いに行くことがしばしばありました。

入院ベッドがあるけど、常勤医が1〜5人程度の病院ですね。

 

 

過疎地域、医師がほとんどいない地域の医師確保は、難しいです。

年収、待遇は、いいに越したことはないけど、それが決定打にはならない。

 

誰だって、生きていけるなら、住み心地のよい地域で暮らしたい。

医師として研鑽を積みたい。

このあたりが大きいかと思います。

 

田舎医療徒然②医師の配置 で「医師・医師家族は攻撃対象になりやすい」と書きました。

 

診療所お手伝いライフ 

実際自分がどうだったかというと

これまでの経験では、攻撃されたことはありませんでした。

どちらかというと「お医者様〜ありがたや〜」という文化がまだ生きている感じでした。

しかし…それはそれで……いいのか…悪いのか…。こっちもただの人間だよ…。

 

住民もスタッフも、本当に優しくて、いつも来てくれてありがとう〜、という態度でした。

それまでの常勤医が素晴らしく、信頼を築き上げているのもあったとは思います。

 

医師も目立ちますが

患者側も少ないので「医師に嫌われたら困る」と思っていたのかもしれません。

 

 

私が、過疎地の診療所で、唯一困ったのは「定住していない方」でした。

 

住所は一応もっているようなのですが、いつも移動して暮らしているという方々で

薬の貰い方に異様なこだわりがあり

医学的に許容できない「初受診での、薬の大量処方」を要求され続けました。

大きい病院だと絶対に無理が通らないからと、全国津々浦々診療所だけを狙ってあちこちを受診しているようでした。

 

そんなに薬が必要な状態なら、一度検査を受けた方がいいと言っても聞き入れられず……結局常勤医に確認して、処方できる限度の薬を出しました。

あれは悲しかったですね…。

本人はそれでも「量が足りない」と言ってました。

制度で決まってる量以上は基本的に処方できません。

状態を把握できてない飛び込みの患者さんに大量処方なんて、状態を悪化させる可能性がある。

俺(本人)がいいって言ってるんだから出せよ、という態度でしたが、その薬代の7割税金だからなー!

 

まあ、とにかくそれぐらいでした。

 

「大きい都会の病院にかかりたい」

「こんな田舎にいる医師はいやだ」

という方は、私は出会ったことはないですが、

病院にくること自体を諦めるか、都会に引っ越していただきたいです。本当…

今の医療制度は、医師の自己犠牲で成り立っているところが大きいです。

特に、過疎地域の医師は善意で赴任してきたのに、そこで攻撃されたり嫌味を言われると、あっという間に医師は撤退します。

 

医師確保の難しさ、戦略的撤退の必要性

医学部の同期にも

「田舎では暮らせない」という人が結構いました。

どこに行っても知り合いがいなくて

店の選択肢が無限にあるような都会が好きな人はしょうがないかと思います。

 

田舎で暮らすのが平気な医学部生を拾って、心を折らず、育てる。

地方都市と過疎地域のローテーションで、最低限の医療インフラを運営していく。

 

そして、高齢化社会、人口減少社会ですから、

これまでの同じような病院配置を保つのではなく

戦略的撤退、集約化が必要でしょうね…。

 

 医師の募集は目立たないように

年収や待遇、住居が、

地元住民に完全にばれるような公募の仕方は、やめた方がいいですね。

住民からの嫌がらせの原因になります。

 

医師の求人サイトに出すのはいいとして、絶対に地元紙にも報道させなようにする。

Twitterで話題になるような募集の仕方はよくないです…。

 

正直公募は避けて、県レベルの行政、同じ県内の大学、自治医大とのつながりを保つのが、現実的だと思います。

私が手伝った診療所は、大学関連で常勤医がいるところばかりでした。