田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

医学部受験を考えている人とその周囲の人へ〜偏差値とともに必要なもの

今回は特に超個人的意見です。

 

医学部受験はすすめづらい

医学部生時代に

高校生相手に話を求められることがありました。

勉強のモチベーションが上がるような話をさ、先輩として話してやってよ」

という風に。

 

そのとき

「うーん…。気乗りしない。てか、安易におすすめしたくない」

と思っていました。

 

今、実際に医師をしてみると尚更です。

 

ぶっちゃけ

モチベーションが上がるような話はできません。 

特に、ワークライフバランスを重視するタイプの人には

医師はおすすめしないです。

 

「家庭やプライベートを大事にバランスよく働く」が実現しづらい職業だからです。

 

今、この現状をどうにかしようと

模索が始まったところではありますが……いつそうなるのやら。

 

 

頑丈さが必要&休み少ない

 

きっついです。

 

正直、別の方法で、自立してご飯が食べていけるなら

そっちがいいんじゃないかなと思います。

  

確かに、医師は生計は立てやすいです。

 

しかし

  • 強靭なメンタル
  • 睡眠時間少なくても平気な体力
  • プライベートをお金に還元する生き方

が求められます。

 

 

土日も仕事。回診か、日直当直。

その他にも時間外の呼び出し。

呼び出しが少ない科もありますが、少ないだけであってゼロの科はほぼない。

病理の先生だって、急に解剖に呼ばれたりする。

 

一にも、二にも、体力が必要です。

 体力少なめでも工夫次第でやれますが、折り合いつけるまで、大変です。

 

やり甲斐…?

やり甲斐は一見あります。

あくまで、一見。

 

命は有限

時々、

人間は最終的に亡くなるのに

ここまで足掻く必要はあるんだろうか

という問いに、しばしばとらわれます。

 

この問いに対する正解を、私は見つけられません。

ただ、心に留めて、やっていくしかないのでしょう。

 

病気になっても悪くなかったと思えるサービス業、と言い聞かせて心を宥めたり……

若い人を治せて嬉しかったり…でも、若いって何歳までだろうって思ったり……

 

救うというより、治すルートにのせる

私の個人的な意見では医者は

病気を治す!人を救う!

というより

治る見込みの人を、適切にそのルートにのせる

という感じです。

 

救う!とか、おこがましくて……言えない。

結構、無力。

 

 

つきまとう訴訟リスク

 訴訟は「悪いことした医師」ではなく

「努力して、身を尽くして仕事を頑張っていた医師」にも

降りかかります。

 

「自分はちゃんとやるから、大丈夫」なんてことはありません。

 

福島大野病院事件は、その典型例になります。

 

 

医師はインフラ

公共の福祉を担う職業です。

今、医師不足、医師が都会に偏っていることが現在問題になっています。

これから、医師は働く場所を制限される可能性があります。

 

医師の再配置=医師の足りないところに強制的に派遣される

→好きな場所、好きな科で働くことを制限される仕組みが、国によって行われる可能性があります。

 

まあ……これは、まだまだ先の話かな。

 

とにかく

医師はインフラなんです。

社会の基礎なんです。

そこらへんを意識してから、受験を考えたほうがいいです。

 

個性、個人なんか求められてなくて

医師は「医療を提供する」「資源」なんですよ。

 

 

17歳とかそこらの子に

医師の働き方も教えずに

医学部に誘導するのは反対です。

 

医師の働き方を知らないのに、高校生に勧めないでください。

 

安易に、成績がいいだけで選択肢にあげないことです。

 

体力はあった方がいい

体力です。

強靭な体力。

 

あと、強めのメンタル。 

 

コミュニケーション能力と

国語力も

あった方がいい。

 

正直、医師になって必要なのは

数学や物理の能力より、圧倒的に、

コミュニケーション能力と、国語力です。

  

患者さんとお話しして、たくさん情報を得て

きちんと治療の意義を説明する。

他の科の医師、看護師、検査技師、事務ともひたすらコミュニケーションです。

 

 

 

勿論、勉強も一生しなきゃいけないです。

 

医学は日進月歩で、アップデートも早いです。

日常的に、新しい知識をいれる必要があります。

 

 

 

 

  • 体力がある(もしくは、自覚しメンテナンスできる)
  • メンタルが強い (もしくは、弱さを自覚しコントロール)
  • 人と関われる
  • 勉強し続ける

 

働きながら身につくこともありますけど……

ここらへんを何とか一つ、宜しくお願いします。

 

医師の働き方も色々あるけれど

 

探せば医師でも色んな働き方はあります。

夜間の勤務なく、土日も休める働き方も、確かにごく稀にあります。

人との関わりが少なめ(ゼロではない)な科もある。

 

でも、そうじゃない働き方が、大半を占めます。

楽に生きていくつもりで来ないでください。

 

定時帰宅、安定した必ずとれる休み、

そういうのからは遠いのが医師の世界です。

(改善は、少しずつされつつあるけれど)

 

10代の子達を、そういう世界に安易に誘導するのは……賛成できません。

 

受験生の皆さま、それでも目指す、というのなら是非ぜひいらしてください。

 

楽ではないですが

達成感が得られることも、感謝されて嬉しいことも、確かにありますから。