田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

日本の医療の特徴②高度な技術、公費を投入

日本の医療の特徴を簡単に紹介する後編です。

 

前編はこちら 

 

大きな特徴4つ

  1. 公的保険
  2. フリーアクセス
  3. 安くて高度(保険が使えて安い、国が値段を決定。で、世界的にトップ技術)
  4. 公費を投入(税収を投入して、保険料だけで足りない分をカバー)

 

今回は後半2つ。

 

安くて高度な技術

国が値段を設定

公的保険があり、自己負担額が少ない話は前回しました。

 

さらに、保険適用の治療は、国が値段を決定しており

異様な高額ということはありません。

  

保険点数1点=10円です。

以下の本、サイトで値段が確認ができます。

 

 

平成30年診療報酬点数表 | しろぼんねっと

 

自由診療…保険適用外の治療となると、病院ごとに値段が違います。

そして全て自己負担です。

 

例えば、不妊治療や、美容整形は、保険適用外です。

(不妊治療は、助成金制度あり)

また、効果がないニセ医療も、ここに紛れ込んでいます。

 

 

人間の命にかかわる医療は

基本的に社会の助けが入るのが日本です。

 

高度な技術

日本の医療技術は高度です。

 

たとえば産婦人科小児科分野。

周産期死亡率という言葉があります。

年間1000出産あたりの

妊娠22週以降の死産と、生後1週間以内に亡くなる赤ちゃんの数です。

 

つまり、生まれる前後に亡くなる赤ちゃんの率です。

 

これが日本は断トツに少ないです。

2016年 3.6でした。100回に1人以下、1000回に3.6人。

 

どの先進国と比べても半分以下です。

(以下、外国と比べるために、妊娠28週以降+新生児死亡

 

2012年の数値です。

アメリカ 6.8

ドイツ 5.5

 

日本 2.6

 

かなーり少ないです。

 

他、妊産婦死亡率という言葉もあります。

10万人あたりの妊婦さんの死亡率です。

これも日本は低い。

 

以下、2012年の数値です。

アメリカ 18.7

カナダ 7.6

 

日本 3.5

 

妊産婦死亡は、デンマーク(3)、イタリア(3.3)、オランダ(2.2)、スウェーデン(2.6)等にやや劣ります。

しかし、それらの国は「赤ちゃんの死亡率」は日本ほど低くありません。

日本はバランスがとれています。

 

あくまで、お産は母子ともに命がけです。

それを忘れさせるぐらい安全にしたのは、日本の医療の努力の賜です。

本当に、日本の周産期医療はトップレベルなのです。

 

他領域の医療技術も、トップレベルです。

平均寿命が長いのは、栄養面など他の理由もありますが

医療技術が劣っていたら達成するのは不可能です。 

 

ちなみに 

平均寿命は、亡くなる人の平均年齢ではないです。

0歳児の平均人生時間

各年代での死亡率をくぐり抜けた結果の数値です。

これが長いのは全年代で死ににくいことを意味します。

 

公費を投入

国全体としての医療費は増大しています。

 

保険料だけでは賄えていません。

既に、税収……公費が投入されています。

「保険料以外」を投入している現状は、

「保険制度」としては既に破綻しているとも言えるかもしれません。

 

医療費増大の原因は2つ

  1. 高齢化社会
  2. 高額な最先端技術 

 

高齢化社会が、医療費増大につながるのは想像しやすいかと思います。

主に2について述べます。

 

高額な最新技術も保険適用

外科でも

オーソドックスな、開腹手術と

新しい技術の、腹腔鏡手術があります。

 

例えば、75歳以上後期高齢者(1割負担)が

大腸癌(結腸癌)の手術を受けたとします。

 

開腹手術 35680点→356,800円

 自己負担 35,680円

    公費    321,120円

 

腹腔鏡手術 59510点→595,100円
 自己負担 59,510円
 公費   535,590円
 
 
これだけ見ても、新しい治療の腹腔鏡の方が21万ぐらい公費の支出が多いです。
(自己負担3-6万を高いと感じる方がいるかもしれませんが……車の修理代、固定費合計より安くないですか?癌の手術ですよ。命ですよ)
 
保険適用で、きちんと最新の医療を提供しているからこそ
医療費は増大しているのです。
 
 
 
日本が他国に比べてやりすぎている延命治療も公費を圧迫する一因です。
この点は、費用面だけが問題ではなく
私は、その延命行為は苦しいだけではないのか、という思いがあります。
 延命治療を控えるのが即、平均寿命の大幅な短縮につながるわけではないです…。平均寿命の定義は上に書いた通りなので。
 

クオリティ・アクセス・コスト

医療は

  1. 質 quality
  2. アクセスの公平性 equity
  3. 費用 cost

のバランスをとることが大事です。

 

日本はWHO(世界保健機関)から、高評価を受けています。

医療を受ける側にとっては恵まれていると言えます。

 

しかし、国にとっては支出が増える一方です。

医師の多くは、今の制度はもたないと感じています。

 

いきなり破綻し

裕福な人専用の医療となるのは、避けたいところです。

 

各年代の負担や

延命治療などについて、考え治す時期にきているのかもしれません。

 

個人的におススメの、他サイトのリンクを貼っておきます。

高齢者の死に方について世界との違いを考える|みんなの介護ニュース

「税金で高齢者を支えている」と思ったら大間違い。実は勤労世代も5人に2人は逆に社会に支えられている

日本の医療の特徴①公的保険とフリーアクセス

日本の医療の特徴を簡単にご紹介。

 

病院は待ち時間は長いし、診察時間は短いし、医師は何言ってるかわかんないし……

と、不満を持つ方も多くいらっしゃると思います。

 

ところが

 

日本の医療制度は、世界的にはかなり良い方です。

WHOから高評価で、患者にとって良い制度とされているんです。

大雑把に4つの特徴から説明します。

 

大きな特徴4つ

 

  1. 公的保険 (国民皆保険!)
  2. フリーアクセス(病院を選べるのって珍しい)
  3. 安くて高度(保険が使えて安い、国が値段を決定。で、世界的にトップ技術)
  4. 公費を投入 (税収を投入して、保険料だけで足りない分をカバー)

 

公的保険

日本は国民皆保険です。

全員が、なんらかの公的な医療保険に入っていることになっています。

 

普段、病院窓口で払う代金だけが、医療費ではありません。

明細書を見ると、医療費と、自己負担分の額が全然違うはずです。

保険証を忘れた時、とんでもない額を払わなければならず、驚いたことはないでしょうか。

 

大抵の人は3割負担、今は後期高齢者(75歳以上)だと1割負担です。

これ凄いことなんですよ。基本70%オフ!

75歳以上になれば90%オフなんです。

そんな商品って、他に世の中にありますかね?

 

裕福な人だけが、医療を受けられる状況を避けるために

皆で社会保険料=医療費を納めて、互いに負担しよう、という制度です。

 

これがなかったアメリカの破産原因の第一位は、医療費です。

2億の資産がある夫婦でも、癌になると破産していました。

全然足りないのです。

 

以下、アメリカの医療費です。

(というかアメリカは、医療機関によって値段が違うという問題も…)

 

頭部CT 1回5~10万円

 救急外来で「心配だからCTとってくれ」という患者さんがいますが、この値段だったらそう言えますかね…?

 

肺炎 30日間入院すると数千万円

 誤嚥性肺炎で繰り返し入院して徐々に弱っていく高齢者の方がいますが、それができるのも、日本ならでは。

 

アメリカはこんなとんでもない値段な上、「公的保険なし」なのです。

自分で入る民間保険しかないのです。

まさに裕福な人のみが、医療を受けられる制度でした。

(なんとか始まったオバマケアも、なかなか難しい状況のようです…)

 

諸外国について詳しく見たい方はこちらへどうぞ

価格.com - 海外の医療費 | 海外旅行保険の必要性

 

ちなみに

日本には公的な国民皆保険に加えて

高額医療制度というものがあります。

一定額を超えたときに、助けてくれる制度です。

詳しくはこちら→ 高額な医療費を支払ったとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

 

 

フリーアクセス

病院にかかるとき、どこを受診しようって調べますよね?

これも珍しい。

 

ゲートキーパー医(家庭医)という制度がある国が結構あります。

イギリス、ドイツ、フランス、アメリカなどです。

 

こういう国は、具合が悪くなった時

まず指定されたゲートキーパー医を受診して、そこから専門の病院に紹介されます。

直接、大きな病院や専門医にかかることは許されていません。

(緊急時を除く)

 

しかも、ゲートキーパー医も予約数日後にやっと受診ができることも多いそう。

そこから専門医に紹介となると、数週間。運が悪いと数ヶ月単位とか。

 

つまり、病院にたどり着くまでがめちゃめちゃ遠いのです。

というか、日本が病院までの距離が近い。

 

日本のフリーアクセスは、単純にはいい制度だと思います。

 

しかし、大きい病院に不必要に受診する人が増える原因にもなっています。

 

当たり前ですが、医療者以外は、やはり医学の深い知識があるわけではありません。

軽症を重症ととったり、大きい病院にかかって検査をしたがったり…ということがあります。

フリーアクセスに任せていると、効率が悪いのはしょうがない面があります。

(その知識を身に付けるための医学部6年間ごりごり勉強ライフ、その後も続く勉強につぐ勉強なわけで)

 

結果、医療資源(人、検査、薬)などを無駄遣いすることになり

医療現場の疲弊や医療費(保険料や税収)の無駄遣いの一因になっています。

 

日本では、国民皆保険のおかげで

「安心のために」「念のため」に受診する方が諸外国に比べ多いですしね。

……諸外国の病院へのハードルが高すぎるとも言えますけども。

 

 

日本は「病院に来てから数時間待つ」というのが当たり前になってはいますが、

受診までハードルが低いのがその一因といえるかもしれません。

(勿論、これだけが原因ではないです)

 

 

大学病院などは「基本、紹介状持参で」という形ですが

ゲートキーパー制度に比べれば、受診は制限されていません。

 

 

続きます。

田舎医療徒然④診療所お手伝いの日々

過疎地域の診療所、小さな病院にお手伝いに行くことがしばしばありました。

入院ベッドがあるけど、常勤医が1〜5人程度の病院ですね。

 

 

過疎地域、医師がほとんどいない地域の医師確保は、難しいです。

年収、待遇は、いいに越したことはないけど、それが決定打にはならない。

 

誰だって、生きていけるなら、住み心地のよい地域で暮らしたい。

医師として研鑽を積みたい。

このあたりが大きいかと思います。

 

田舎医療徒然②医師の配置 で「医師・医師家族は攻撃対象になりやすい」と書きました。

 

診療所お手伝いライフ 

実際自分がどうだったかというと

これまでの経験では、攻撃されたことはありませんでした。

どちらかというと「お医者様〜ありがたや〜」という文化がまだ生きている感じでした。

しかし…それはそれで……いいのか…悪いのか…。こっちもただの人間だよ…。

 

住民もスタッフも、本当に優しくて、いつも来てくれてありがとう〜、という態度でした。

それまでの常勤医が素晴らしく、信頼を築き上げているのもあったとは思います。

 

医師も目立ちますが

患者側も少ないので「医師に嫌われたら困る」と思っていたのかもしれません。

 

 

私が、過疎地の診療所で、唯一困ったのは「定住していない方」でした。

 

住所は一応もっているようなのですが、いつも移動して暮らしているという方々で

薬の貰い方に異様なこだわりがあり

医学的に許容できない「初受診での、薬の大量処方」を要求され続けました。

大きい病院だと絶対に無理が通らないからと、全国津々浦々診療所だけを狙ってあちこちを受診しているようでした。

 

そんなに薬が必要な状態なら、一度検査を受けた方がいいと言っても聞き入れられず……結局常勤医に確認して、処方できる限度の薬を出しました。

あれは悲しかったですね…。

本人はそれでも「量が足りない」と言ってました。

制度で決まってる量以上は基本的に処方できません。

状態を把握できてない飛び込みの患者さんに大量処方なんて、状態を悪化させる可能性がある。

俺(本人)がいいって言ってるんだから出せよ、という態度でしたが、その薬代の7割税金だからなー!

 

まあ、とにかくそれぐらいでした。

 

「大きい都会の病院にかかりたい」

「こんな田舎にいる医師はいやだ」

という方は、私は出会ったことはないですが、

病院にくること自体を諦めるか、都会に引っ越していただきたいです。本当…

今の医療制度は、医師の自己犠牲で成り立っているところが大きいです。

特に、過疎地域の医師は善意で赴任してきたのに、そこで攻撃されたり嫌味を言われると、あっという間に医師は撤退します。

 

医師確保の難しさ、戦略的撤退の必要性

医学部の同期にも

「田舎では暮らせない」という人が結構いました。

どこに行っても知り合いがいなくて

店の選択肢が無限にあるような都会が好きな人はしょうがないかと思います。

 

田舎で暮らすのが平気な医学部生を拾って、心を折らず、育てる。

地方都市と過疎地域のローテーションで、最低限の医療インフラを運営していく。

 

そして、高齢化社会、人口減少社会ですから、

これまでの同じような病院配置を保つのではなく

戦略的撤退、集約化が必要でしょうね…。

 

 医師の募集は目立たないように

年収や待遇、住居が、

地元住民に完全にばれるような公募の仕方は、やめた方がいいですね。

住民からの嫌がらせの原因になります。

 

医師の求人サイトに出すのはいいとして、絶対に地元紙にも報道させなようにする。

Twitterで話題になるような募集の仕方はよくないです…。

 

正直公募は避けて、県レベルの行政、同じ県内の大学、自治医大とのつながりを保つのが、現実的だと思います。

私が手伝った診療所は、大学関連で常勤医がいるところばかりでした。

「標準治療」はスタンダードな最新治療

 標準治療という言葉を聞いて、どんなイメージを持ちますか?

ふつうの治療?なんかいまいちな感じ?でしょうか。

 

この言葉、イメージと、実際の意味が大きく異なる言葉です。

 

標準治療の定義

効果があると証明されている最新治療

しかも、保険適用で安い

病院窓口で個人が支払う額は安い*1

 

つまり最高なんです。

現時点の医学が提供できる最高の医療なんです。

 

英語だとStanderd treatment スタンダードな治療。

これを日本語に訳すと、どうしても「標準」となってしまうんですよね。

標準という言葉からは、日本人は「平均」とか「真ん中」とかイメージしがち。

「標準?じゃあ、もっといいものがあるんじゃないか?」と咄嗟に感じてしまいます。

 

違いますから!

最新の効果が証明されてる治療ですから!

 

 

最先端の医療に交じるニセ医療

この間NHKクローズアップで特集されていました。

最先端治療とホームページで銘打っている病院で治療を受けたが

全く効果がなく、病がどんどん悪化して短期間で亡くなってしまったという方が。

 

最先端医療というきらびやかな言葉を使って

病に苦しむ人を搾取する詐欺まがいのニセ医療が存在するのです。

 

①最先端の「標準」治療なのか

②最先端の「効果が証明されていない」治療なのか

 

これは全く違います。

 

上に書いた通り、標準治療は、効果が証明された最新治療です。

で、②効果が証明されてない治療の中にも、2種類あります。

 

②-1.標準治療になるのを目指している最新治療

「患者さんにきちんと効果がある証拠」を貯めている真っ最中のものです。

臨床試験を行っているもの等です。

治験とも呼んだりします。

 

今の標準治療では

進行癌を完全に治す・消すことは難しいですし

他にも克服できていない病気はいくつもあります。

それを、一つでも多く克服しようと頑張っている研究段階のものですね。

 

治験は、標準治療よりも高いことが多いですが…

異様な高額ということはないです。

 

あ、治験に参加しても超高額な謝礼などが渡されることはありません。ドラマブラックペアンで患者さんが300万渡されてたらしいですが、そんなことは実際には欠片もありませんので。

 

②-2.証拠もないし標準治療も目指してないニセ医療・魔法系

 こっちは倫理感も何もありません。

標準治療を目指しているわけでもありません。

 

それらしい言葉を並び立てて

「絶対に治る」

「ここに来たから大丈夫」

「癌は克服できる」

と真っ当な医療者が使えない言葉を使って

病に苦しむ方を誘いこんでいるのです。

 

そして高額です。

科学的に証明されていない偽物なので、国からお金がおりないからです。

 

ニセ医療の見分け方

・治療効果の証拠が「何人かに効いた」などごく少数。もしくは「こんな風に効く」という図が書いてあるのみ。(まともな医療は何千人、何万人の治療効果の蓄積です)

・異様な高額

・標準治療の否定

・「絶対」「大丈夫」「他の医者に騙されている」などの言葉を使う

 

あたりかと思います。

 

標準治療は、最高で最新だが全てを克服していない

標準治療は、まぎれもなく

科学的に証明された最新治療です。

しかし、全ての病を克服しているわけではありません。

合併症だってあります。

副作用だってあります。

 

医療者は、それを説明せざるを得ません。

 

「合併症も副作用もありますが、70%ぐらい治ります。病とつきあってきましょう」

という説明より

「絶対に治る!!大丈夫だ!」

に流れていく気持ちもわかるのですが……

 

信じたい世界だけを信じているのは危険です。

 命を縮め、お金を詐欺師に奪い取られることになります。

 

医師は安心させてくれない

説明を詳しく聞くほど不安が募る、とそんな声をよく聞きます。

でも、嘘は、言えないのです。

 

今の人手不足の医療現場で

コミュニケーションを十分にとって

不安を与えすぎず

嘘も言わず

事実を伝えるというのは中々難しいです。

 

他の先進国のように

病院で働いている人をもっと増やして

説明専門、コミュニケーション不全解決専門の職種などがいれば、少しはいいのかもしれませんね…。

 

 

最先端がん治療トラブル、よくできている番組でした。

“最先端”がん治療トラブル - NHK クローズアップ現代+

 

 

*1:

保険適用の標準治療は、病院窓口で「個人が払う額」は「安い」です。

3割負担、後期高齢者だと1割負担、というやつです。

それ以外の分は、税金や保険料で賄われています。

そう考えると、真の意味で安くはないのです…この高齢化社会では医療費増大が問題なのです。

この国民皆保険が、あとどれくらいの期間、どんな形で保たれるかは不明です…

がんを表す言葉

 

今回は、淡々と「がん」を表す言葉の説明です。

 

すごく簡単にがんの定義

がんという病気の名前は、大抵の人が聞いたことがあるでしょう。

ものすごく簡単にいうと

細胞が、勝手にめちゃくちゃに増える病気です。

 

人間の体は、細胞が作っています。

細胞は一定のルールに従って並んで、眼とか、胃とか、カラダをつくっています

 

その細胞さん達が、ルールを全力で無視して増えまくるのです。

そして

カラダのあちこちに進撃したり(=浸潤)したり

元の場所から遠い所まで攻め込んだり(=転移)したりして、人の命を奪います。

 

こういう悪さをするのが、がんです。

 

がんの中にも、良性と悪性があると思っている人がいるかもしれません。

間違いです。

「がん」=悪性です。

 

腫瘍=良性腫瘍+悪性腫瘍

実は「細胞が勝手に増える」という状態は、腫瘍(しゅよう)です。

 

腫瘍の中に、良性腫瘍と、悪性腫瘍があるのです。

で、悪性の場合だけを、がんと呼びます。

 

こんな感じです。

 

f:id:kotonohanohako30:20180623224338p:plain

 

 

 

良性腫瘍は、細胞が勝手に増えつつも、わりと「大人しい」です。

なにせ良性ですから。

大人しくて、基本的に人の命を奪うことはない。

勝手に増えるけど、割と行儀よくならんでいて、遠くに飛んでいかない。

(境界悪性とか、そういう微妙な言葉もありますが、今回は割愛)

それが良性腫瘍です。

 

悪性腫瘍、つまり、がんは、全然大人しくないです。攻め攻めです。

勝手に、ぐちゃぐちゃに増えて

隣の臓器に進撃したり(浸潤)、遠くにとんでったりします(転移)

さっさと丸ごと取らないと、命に関わります。

 

イメージはこんな感じです。

f:id:kotonohanohako30:20180623231404p:plain

 

がんという言葉が出た時点で

悪性で、厄介ということを表しています。

 

最近は

早い段階で見つかれば治りやすいですし

進んでいても「うまく付き合う」方法が増えてきつつありますけどね。

 

ここらへんの言葉について

友人によく質問されますし

誤解している方が結構いらっしゃるので、まとめました。

 

 

読んでくださりありがとうございます。

ここから先は流しても大丈夫です。

細かい話になります。

 

悪性腫瘍の中にも種類がある

「がん」が、細胞がぐちゃぐちゃに増えるやつってのは、上に書いた通りです。

 

癌:「上皮」の悪性腫瘍

医学では

「上皮」と分類される細胞からできた悪性腫瘍だけを

「癌」とよびます。

漢字の「癌」です。

 

上皮と言っても皮膚だけじゃないです。

胃、肺を作ってる細胞など、たくさんの細胞がここに分類されます。

あくまで医学の言葉遣いな分類なのです。

 

肉腫:「非上皮」の悪性腫瘍

「上皮と分類されない細胞(非上皮性)」からできた悪性腫瘍は

「肉腫」と呼ぶのです。

「非上皮」と分類されるのは、脂肪、筋肉、神経です。

 

白血病:血液中の細胞が勝手に増える

血液中の細胞が好き勝手に増えてるのは「白血病」です。

白血球とか、リンパ球とかが増えまくるのです。

 

よく「白血病は血液のがん」と表現されるのは、このあたりにあります。

細胞が好き勝手に増えまくって悪さをするので「がん」と表現してるのです。

 

これは固まりをつくらないので腫瘍じゃないんですが、わかりやすさのためにここに書かせてください…専門医の皆さまどうか見逃していただけると…

 

 

以上をまとめますと、この表みたいになります。

f:id:kotonohanohako30:20180625155557p:plain

この「がん」というひらがなの言葉は

例えとか、大きな概念として使われていることがあります。

 

上の表の通り「がん」は「癌」よりも、広い範囲を表現することになります。

医療現場では、ひらがなで書くか、漢字で書くかで、使い分けているのです。

 

 

しかし

ニュースや新聞では

がんでも、癌carcinomaでも

全部ひらがなで「がん」と表記してることが多いです。

わかりづらいので、揃えたらしいです……。 

 

……いや、だから流してくださって結構ですと途中で書いたんですけども。

 

 

とにかく

この「がん」という言葉は

細胞がわーーっと勝手に増えて悪さをしている病気を表現しているんだな

と認識していただければな…と思います。

 

わかりやすさ優先で、かなりざっくり書いてます。

やや不適切な表現なところがあるかもしれません。

医学生は、広義とか狭義の癌とか習うはず…きちんと成書を当たって確認してください。

 

 

 

ちなみに、この悪さをするがん細胞たち、本当に多彩な種類や特性があります。

そこらへんを診断するのが病理医になります。

フラジャイルの世界ですね。

 

 個人的にこの漫画は面白すぎます。

チャイルドシートで子供の死を防ぐ③

先日、ツイッターでチャイルドシートのことを呟きました。

シリーズ記事になります。

チャイルドシートで子供の死を防ぐ①

チャイルドシートで子供の死を防ぐ②

 

 

 

調べたこと、リプライ欄を含め、

かなりの情報量となりましたのでまとめます。

 

 チャイルドシートが好き、車が好きで、

乗せて走り出せばきゃっきゃと笑うタイプの子もいます。

しかし、逆に、泣く子もいるようです。

 

その対策にも、リプ欄にたくさんの体験談が寄せられていました。

 

 

ひたすら習慣付け

0歳、生まれた直後から習慣付けをスタートします。

 

とにかく、親がぶれずに徹底するのがベストのようです。

生まれた直後(お産した病院の退院時)からチャイルドシートに乗せる。

その後も、絶対に乗せ続ける。

親がぶれなければ、「そういうもんだ」と自然と納得する様子。

 

なかなか乗せる機会がないなら、家に中古の安いのを買って慣らしておく、なども有効なようです。

 

チャイルドシートのときだけの特別なおもちゃ

車に乗せるときだけ与える特別なおもちゃ(場合によってはお菓子)を

用意しておくという手もあるようです。

何回か繰り返していうちに、赤ちゃんの方が覚えてしまうらしい…。

あのおもちゃで遊びたいから車に乗る、というパターンもあるとか。

 

泣いたら停止してあやす?

ぐずるぐらいなら、構いすぎないのがいいようです。

 

泣く度に車を停止して降ろすと

赤ちゃんが「泣けば、おろしてもらえる」と学習してしまうそうです。

そうすると、泣いて体を張った拒否をするようになる、とのことです。

 

二人きりで買い物のシーンが多いお母さんからこの意見が寄せられており

「放っておいうたら、そのうち泣かなくなった」とのことでした。

 

繰り返しますが、

子供のギャン泣きが辛いのは大人の方です。

それに耐えられず外すと、子供の死に繋がります。

優先順位は間違えないようにしたいです。

 

 

また、長距離の場合は

休憩時間、お世話時間を考慮して、時間に余裕をもって計画をたてるに尽きるよう。

大人側の余裕が違います。

 

 

ジュニアシートへの切り替え

赤ちゃん向けのから、幼児向け、子供向けのに切り替える時は

家の中でチャイルドシートに座らせて遊んで

「これで車に乗るの楽しみだね」などと話してみるのもいいそうです。

 

言葉が通じるようになったら

説明する。

場合によっては、やや嘘を混ぜて。

 

なるほど、と思ったのは

「うちの車は、きちんとシートベルト(orチャイルドシート)をしないとエンジンがかかりません!」と子供に言って聞かせたというものでした。

これ、自ら子供がすすんでやるようになるそうです。

 

他に

「おまわりさんに捕まるよ!」という説明もありました。

確かに、道路交通法違反ですし。

 

正攻法で

命に関わる、怪我をする

と説明し続けるのも手だとは思います。

 

結局、親がブレずに

シートベルトをしない限り出発しないのを守り続ければ

子供はすすんでやるようになるようです。

きちんと装着する前に親が発進しようとすると

「まだカチャンしてない!」と怒るようになったというリプも寄せられました。

 

 

 

チャイルドシートは大事

とにかく、子供の命を失わないためには、頑なに守る必要があります。

 

自分の子だけでなく

勤務中に「チャイルドシートで防げた悲劇」に会いたくない一心で

このツイートをしたのですが、反響に本当にびっくりしました。

 

この記事でピックアップした以外にも、

冒頭ツイートのリプ欄に沢山の事故、怪我、工夫、苦労話が集まっています。

チャイルドシート関連でお困りの方は

クリックして覗いてくださるとヒントが得られるかもしれません。

 

今回のツイートについてgrapeさんが記事にしてくださいました。

grapee.jp

 

 

ちなみに、我が家はcombi社のチャイルドシートです。

 

チャイルドシートで子供の死を防ぐ②

先日、ツイッターでチャイルドシートのことを呟きました。

シリーズ記事になります。

チャイルドシートで子供の死を防ぐ①

 

 

 

調べたこと、リプライ欄を含め、

かなりの情報量となりましたのでまとめます。

 

チャイルドシート設置の仕方

場所

後部座席です。

中でも、運転席後ろが最も安全とされています。(事故の時、ドライバーがとっさに自分を守るようにハンドルを切るからだそう…)

エアバッグ作動の衝撃で、子供が怪我をすることがあるので助手席はダメです。

 

向き

体重10kgあたりまでは後ろ向きが推奨です。

製品によるので確認しましょう。

 

何故後ろ向きかというと、乳幼児は頭が大きくて、頚椎損傷のリスクが高いからです。

これらを避けるために、後ろ向きが推奨されてます。

 

乳児、幼児、子供用と、体格・年齢によって対応しているものが違います。

正しく、適正サイズを使いたいものです。

 

設置方法は、

シートベルト式、ISOFIX式などあります。

どちらにしても正しく使えばOKです。

我が家はISOFIX式にしました。

 

あ。チャイルドシートの義務は6歳までです。

それ以降は、大人同様、シートベルト着用の義務があります。

 

子育てタクシー

チャイルドシートの必要性、義務はでしつこく書きました。

じゃあ、タクシーやバスはどうなのさってなると思います。

簡単に言うと、第二種免許の場合(一般旅客自動車運送事業に供される場合)、免除という現状になっています。

 

だからといって事故に遭わないわけじゃない。

できる限り装着したいところです。

 

そこで登場するのが、子育てタクシー。

全国的にそれなりに存在します。

チャイルドシートに対応している会社もあるそうです。

 

性質上、予約や、会員登録が前もって必要な場合が多いようです。

(流しのタクシーにチャイルドシートが乗ってることはまずないですよね…)

 

チャイルドシート有無は会社によりけり、

予約必要、日程制限などもあるので、前もって確認が必要でしょう。

tyaideki

自分の住む地域、旅行先などについては調べておくと便利だと思います。

kosodate-taxi.com

 

スイスだと、タクシーの座席が、

簡単な操作でジュニアシートに変えられるそうです。 

社会全体で子供の存在を考慮しているのですね。

 

 

バスに関しては、現状対応は厳しいようです。

幼稚園バスに関しては、とっさに逃げることを考慮してつけてないという説も…。

 

 

ポータブルチャイルドシート

持ち運びできるチャイルドシートはないのか?と探してみました。

ありました。

 

Luftikid ルフティキッド

対応:9ヶ月〜7歳

空気注入式

日本で販売中のとこ見つけられませんでした。

 

mifold マイフォールド

対応:3〜11才頃

シートベルトを体に合わせるというコンセプト。

本体重量700g!…Amazon・楽天等で販売中

 


 

 

乳児の頃はポータブルは諦めざるを得ないですかね。

日本では、自家用車か、チャイルドシート対応タクシーしかないかな、と。

 

ある程度大きくなったらmifoldを購入すると決意しました。

 

長くなりました。

③に続きます。 

 

 

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