田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

学生レベル以下の手術シーン ファンタジーすぎるDr.X③

シリーズ記事になります。

ドラマDr.Xツッコミを軸に、医療について書いていきます。

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて

 

つっこみどころ

  1. 日本じゃない
  2. 病気の概念がおかしい(特に癌)
  3. 手術シーンが適当すぎる(手術室前の段階でアウト)
  4. 決め台詞が無茶苦茶ださい(「失敗しないので」の方じゃない)
  5. ”フリーランス軍団”、遊びすぎ。
  6. 医局軍団も暇すぎ。無能すぎ。
  7. 悪の権力組織ww( ^ω^)・・・
  8. 手術一つで大騒ぎしすぎ
  9. 病院一つの人事で一喜一憂しすぎ
  10. 医局に属してない医師は今現在結構いる。フリーランス????

 

 手術シーンが適当すぎる

・手術前の手洗い

手術って「清潔操作(せいけつそうさ)」です。

汚い手で人の内臓を触っちゃいけないのは、直感的にわかると思います。

 

「無菌操作」って言い換えられます。

医学でいう清潔=無菌です。

一般的な清潔とは違います。

掃除したあとの埃のない部屋、洗濯した服、顔を洗ったイケメンwなど

清潔感あふれるかもしれませんが、医学的には不潔です。

無菌じゃないですよね。

 

医学的に正しい専門の手洗いをして、無菌のゴム手袋をすると

手が無菌状態=清潔になります。

「清潔(無菌)」になってからは、「不潔(無菌じゃないところ)」を触ってはいけません。菌がつくからね。

 

では、問題。

 

Q. 人間の体の表面で、菌がいるところはどこでしょう??

 

 

 

 

 

A.全部

 

手術用の手洗い後は、自分の体に触ってはいけません。

なぜならば、菌がついて、不潔状態に戻ってしまうからです。

 

はい、ここで思い出しましょう。

 

Dr.Xの手術前の手洗いシーン。

なんだか、大門さんと、その他医師が会話しています。

 

手術用の帽子はかぶっています。

手術着は着ています。

マスクを、きちんとしていません。誰一人として。

つけていないか、紐をたらしているか。

 

え?手術室のゾーンに入ってくるのに、マスクしないの?

 

え?清潔になる手洗いしてんのに、これからマスクつけるために体に触って不潔に戻るの?

 

それとも、全員が看護師さんに

「マスク忘れちゃいましたー。手洗いしちゃったんで、つけてください( ^ω^ )」

とかやんの?(手が無菌状態になった後、不潔操作をさけるために、看護師さんに手助けしてもらうことは、しばしばある。)

 

この失敗は、学生レベル以下。

清潔操作は、学生実習のときに、叩き込まれます。

手術室のナースにブチ切れられます。

「手術室は清潔操作!でてけ!」と。

  

 

手術のときの清潔装備になる手順(基本)

①手術着を着る

 ふつうの服でもいいが、血をあびることもあるので、更衣室にある大量にある単純な服に着替える。靴下もかえたりする。

③帽子、マスクを普通につける

④靴にカバーをつける(つけないこともある)

 

ここまでは、普通の操作=不潔=菌がついてもいい操作。

ここから下は、清潔=無菌操作。

 

⑤手洗い→手と肘あたりまでを無菌にする

⑥無菌ガウンを着る→腕、胸あたりを無菌にする

 手の無菌状態が保たれるように、特別な着方をします。補助が必要です。一人では無理です。要練習です。

⑦無菌手袋をはめる→手の無菌が保たれる

 消毒しても、皮膚は必ず時間がたつと菌が出てきます。

 この手袋は、防御の意味もあります。

 

で、無菌状態になるのは、大体このオレンジで囲んだ範囲内。

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これでやっと、手術が清潔にできるというわけです。

 

 

 

ちなみに、この両手を顔の前あたりに持ってくるポーズも、不潔になる危険が多いからあまりやりません。

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空中に手があると、どこかに手がぶつかるかもしれないし、露出している顔と、「清潔な」手が近く、咳やくしゃみを浴びるかもしれないからです。

 

しゅんしゅんクリニックP (医者ピン芸人だそう)さんの、へいへいドクターでも歌ってますね。

本当は、腕組みポーズの方が多いと。

まあ、彼の決めポーズは、このポーズみたいですけども。

 

手術の適当さ

 

胸とか、腹の手術のとき

手術をやるオペレーターは基本的に、患者の右手側に立ちます。

助手はその向かい側で、道具を渡す看護師さんは足元に立ちます。

これが基本。

 

 

で、オペレーターは、右手で手術器具を受け取ります。

理由はいろいろ。

 

日本人の多くの利き手が右。

左で受け取ると、持ち直すという余計な動作が必要になる。→無駄

左で受け取ると、患者さんの体の上を横切る。→邪魔

 

左手で受け取ると、無駄が多い。

 

だけど、Dr.Xでは結構、左手で受け取っているんですよ。

 

外科手術は

一つ一つの動作に意味があります。

無駄な操作がないのが、うまい手術です。

 

他にも、

ここでその器械使わないだろ。

ってかなり何回も思いました。

 

まとめると、Dr.Xの手術シーン、無駄が多い。

ものすごい格好悪い。

 

天才外科医の話なのに、手術シーンの適当さに萎えることこの上なし。

コードブルーは手術シーンに限って言えば正しいですし

コウノドリは全編通して本当に医療現場です。

 

Dr.Xは、医療監修に全く重きをおいてないんでしょうねぇ……。

 

日本じゃないし、魔法のごとく病気が治るし、そのくせ手術は適当だし。

シナリオと、キャラクターの面白さはわかるんですが、医療をモチーフにしてやるのは本当に勘弁していただきたいっす…。

 

 

手術前の清潔操作だけで、文字数が結構な感じになってしまいました。

手術シーンについては、改めてまた書くかもしれません。

 
つっこみシリーズ、まだ続きます。

 

 

   

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて