田舎女医の小言

外科医やってます。人生で溜まったネタを放出していきます。

ファンタジーすぎるDr.X②癌という病

シリーズ記事になります。

ドラマDr.Xツッコミを軸に、医療について書いていきます。

 

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて

つっこみどころ

  1. 日本じゃない
  2. 病気の概念がおかしい(特に癌)
  3. 手術シーンが適当すぎる(手術室前の段階でアウト)
  4. 決め台詞が無茶苦茶ださい(「失敗しないので」の方じゃない)
  5. ”フリーランス軍団”、遊びすぎ。
  6. 医局軍団も暇すぎ。無能すぎ。
  7. 悪の権力組織ww( ^ω^)・・・
  8. 手術一つで大騒ぎしすぎ
  9. 病院一つの人事で一喜一憂しすぎ
  10. 医局に属してない医師は今現在結構いる。フリーランス????

 

2.病気の概念がおかしい

癌に、特に違和感がありました。

私が専門のせいもあるでしょう。

 

手術だけで治った!

しかも、手術直後に「治った!」と言ってるのがおかしい。

 

癌という病気

癌は、Stage1〜4の4つに分かれます。

 

Stage1,2

早期癌。範囲が小さくて、一部に留まっているイメージ。

絵で描くと下のやつの感じ。

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左上の一つだけに、癌がある。

 

これ、左上の青いところを取れば、かなり高確率で治ります。(*)

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青い所をとる=Stage1、2でやる手術です。

胃癌や大腸癌で、Stage1・特に小さい・大人しめの癌細胞という条件が揃うと、胃カメラ・大腸カメラの治療で済んだりします。

 

Stage1は癌の部分を取るだけで、治ります。9割方。

Stage2は癌を取るだけだったり、薬やら放射線治療を追加することがあります。

膵癌など、いくつかの癌は、タチが悪くてStage1,2でも厳しいです)

 

Stage3,4

進行癌。大きくなってて、他の領地に進行してる感じ。

「3」だと、最初の領地の隣あたり。

「4」は遠くまでいってる。

 

イメージ、こうだと思いますよね?

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上の絵は、違うんです。

 

 

 下の絵が、正しいStage3、4です。

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隣に進行してるだけじゃなくて、小さいのが全体に散らばってる。

 

Stage3は、手術をやって終了ではない。手術だけでは癌は治らない。

小さな小さな癌細胞が体のどこかにいて、再発してくるから、抗がん剤や放射線治療を術後に行うのが基本。

ここからは、治すというより「暴れないようにコントロールする」イメージが強くなってきます。

先に抗がん剤で、あとで手術ってパターンもあります。

 

Stage4は手術は適応外のことが多い。

体に負担をかけまくって、目につく大きな癌をとっても、小さい癌が体に残ることになるから。

つまり、手術は体にダメージ与えるオンリーで、癌は治らないから。

抗がん剤、放射線治療とか、広範囲に効かせる治療をします。

 

Stage3, 4になると、色んな治療の組み合わせて、体力・環境にあった方法で、病気と付き合っていくというのが基本です。

癌といっても、場所や種類によって、Stage3でも治りやすかったり、治りにくかったり、かなり幅があります。
(緩和ケア、癌とのつきあいについては、また記事を書きます)

 

Stage3は、手術だけでは治らない。他の治療も追加する。

Stage4に、いきなり手術するなんて、体を傷つけるばっかり。

これ、基本です。(癌の種類にもよりますが、基本です)

 

 

Dr.Xでの害でしかない癌治療

Dr.Xでの癌は、ドラマを盛り上げるため、殆どStage3~4。

 

まともな医師「こんなの手術は無理だ」

大門未知子「私、失敗しませんから」

 

は…?

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青をとれば治るって…????

 

お前の方針が失敗だーーーーっ!!

 

自分の技術を見せつけるために、人の体を傷つけるんじゃないーっ!

 

ドラマ鑑賞中、私が突然ブチ切れたので、夫がひいてました(笑)

 

 

大門の超絶技術で、目に見える癌をとって、「手術は成功」でしょう。

しかし、癌は治ってない、体に残っているので半年〜1年で亡くなります。

 

大門が「私の患者よ!」って言ってた患者を、退院してから診る様子は一切ありませんし、彼らが通院している描写もありません。

おそらく、退院後は誰にも治療されていないでしょう。

だとすると、半年〜1年程度で亡くなるでしょう。

 

人間は生きている限り、そこに存在しているんです。

手術で終わり、なんて簡単な話はありません。

 

 

かなーり大雑把に書きました。

あくまで基本です。

癌と一言でいっても、かなり多彩。

場所、種類によって違います。全てにあてはめないでください。

 

 

できれば、お願いしたいこと 

Stage1、2で見つかると、本当に治りやすいんです。

逆にいうと、Stage3、4はかなり治りにくいです。

だから、早くみつけたいんです。

 

市町村から案内がくる検診は毎年うけてください。

症状が出るような癌は、Stage3-4のことが多いです。

「健康だよ〜。病気したことないし〜」ってうちに検診にきてください。

Stage1-2でみつけましょう。

 

 

ちなみに、癌で死ねるのは先進国の特権です。

発展途上国は、感染症(ばい菌に負ける、肺炎、下痢)で亡くなります。

妊娠出産でもかなりの母子が亡くなっています。

昔の日本もそうでした。

 

癌になるのは社会が豊かな裏返しです。

環境がよくて長寿なのです。

 

 

つっこみシリーズ、まだ続きます。

 

ファンタジーすぎるDr.Xシリーズ

①日本じゃない、保険制度が違う

②癌という病

③学生レベル以下の手術シーン

④決め台詞が無茶苦茶ださい

⑤頼むからもうちょっと働いて